このデニス・リトキー著(築地書館、2022年)によって書かれた「生徒・教師・保護者・地域がつくる学びの場」というサブタイトルがついた本は、日本の学校教育にとっては50年ぐらい先を行っている試みがいろいろ紹介されています。(原書は、2004年に出ていますから、すでに20年経っていますが!)
本では、高校レベルの実践が紹介されていますが、このMET Schoolという学校を運営しているBig Pictureという組織は、すでに小学校も運営していますし、そのコンセプトに則った学校を世界中で50校ぐらいの運営しています。https://www.bigpicture.org/schools
学校が実施しているキーワードには、アドバイザリー、インターンシップとメンター、エキシビション、ポートフォリオ、ナラティブ、保護者と地域のコミットメントなどがあります。
アドバイザリーは、ホームルームがすでに機能していないということで、一人の学校のスタッフが15人の9~12年生(アメリカの高校は4年間)と過ごすグループのことです。これによって、学校のなかに家族的なものをつくりだしています。
インターンシップとメンターは、学校の外で生徒が過ごす時間が少なくとも年間の3分の1ぐらいはあるので、その働き口の組織と担当者にアドバイザー役を担ってもらう仕組みです。
エキシビションとポートフォリオおよびナラティブは、全部、評価に関係します。この学校には、テストらしきものはありません。その効果に疑問をもっているからです。生徒が知ったり、できるようになったことは、それを証明する手段として。より効果的なのがエキシビションとポートフォリオというわけです。ポートフォリオは、生徒が日々つける記録で、エキシビションは年の最後にする博士論文の口頭試問のようなものです。20分ぐらいの発表の後に、40~60分の質疑応答の時間がもたれます。質問をするのは、同級生、上級生、下級生、教師、メンター、保護者などです。ナラティブは、教師が生徒の出来具合やこれからすべきことなどを文章の形で生徒と親に向かって(結構長く)綴ったもののことです。
Met
Schoolをはじめ、Big Picture Learningネットワークの学校は、いわゆる学校らしい建物や敷地はもっていません。保護者はもちろんのこと、地域の団体や会社までを含めたスペースを学校と捉えているからです。生徒に真剣にいろいろ尋ねられたら、それに応えない大人はいるでしょうか? 多くの地域の大人がボランティアで生徒たちの教育にコミットしています。
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本の内容というか、Big Pictureの紹介が長くなりましたが、『ギヴァー』のジョナスたちが生徒時代の最後の数年間していたことも、インターンシップだったことを覚えていますか? そして、かなりの確率でインターンシップで体験した職に、12歳以降(若すぎる!)はついていました。
こんなところでも(老後の過ごし方や死に方なども?)、『ギヴァー』は時代を先取りしています。