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2011年10月11日火曜日

記憶と歴史

 Doing History連載第1回。
 
 記憶と歴史は、それらを消し去っているがゆえに、『ギヴァー』の重要なテーマの一つです。これらについては、最初にこの本読んだ時(もう、5年近く前)から引きずっています。引きずってきた大きな理由の一つは、この歴史大好きの日本でも、『ギヴァー』のコミュニティと同じように記憶と歴史を軽んじている部分が多分にあると思っていることにあります。それは学校での歴史教育に顕著に表れています。(そして、長く続いている歴史ブームにも未来志向の欠如を痛切に感じます。)

 ずっと引きずっていたことが、DOING HISTORYというタイトルの極めて効果的な歴史の教え方に関する本に出会って、いろいろなことがスッキリしました。まさに、私が考えていたことを明快な言葉で書いてくれていただけでなく、それを実現させる歴史教育の実践例までたくさん紹介してくれていたからです。

 エピローグに、この本がどんなスタンスで書かれているのかが完結にまとめられています。(以下は、私のメモからそのまま書き写します。申しわけありませんが、原書が英語なので、そのままコピーしています。カッコ内の日本語は、私のコメントです。)

193 Being human means thinking and feeling(actingも含めたい気分); it means reflecting on the past and visioning into the future(この後者の未来志向の部分が極めて弱いのが日本の歴史の扱い方であり、日本の歴史教育なのでは?). We experience; we give voice to that experience; others reflect on it and give it new form. That new form, in its turn, influences and shapes the way next generations experience their lives. That is why history matters.(なかなか、こういう捉え方をしていないです。特に、暗記科目としての歴史では。)

History always derives from the present ~ from the ways in which individuals at a given moment in time reflect on and give form to times past. Teaching and learning history is also about imagining a future in which we understand ourselves and others better, and that is the point of this book. (現在と未来のウェートをこんなにも大事にした形での歴史教育ないし歴史というのは、日本に存在するでしょうか?)

Thinking historically is fundamentally about judgment ~ about building and evaluating warranted or grounded interpretations. (この捉え方も大切だと思います。歴史は判断と解釈であるという。単に誰かがすでにしてくれている判断や解釈を覚えることではないんです!!)History, then, is not just opinion: It is interpretation grounded in evidence ~ hence the emphasis throughout this book on helping students learn how to gather and analyze information about the past. (判断や解釈をしっかりするためには、その証拠というか情報収集が大事であり、さらにそれらの分析も大事ですから、そうした力を身につけることにこの本は焦点を当てています。この種の歴史教育を受けた人は、日本にいるでしょうか? 大学院レベルなら当然いると思いますが。)

Always take place in a social context….(これらのことは孤独にするものではなく、仲間とするもの、というのもいいです。多様な視点が得られますから。) In a community of inquiry, where they are responsible for explaining their thinking to interested others. (単に覚えた/わかったで終わりにするのではなく、相互に教え合ったり、あるいは周辺の人に学んだことを発信する形で学んでいきます。自分が知ったり、発見した内容を伝える相手がいますから、相手に理解してもらえる形にしっかり加工して提示する必要があります。この過程で、学びが一段も二段もランクアップします。なんと言っても、他人に教えることが一番いい学び方ですから。)

This sort of agency ~ of believing in one’s ability to take action ~ is crucial to our approach throughout this book. Agency in history is something we want students to learn about, but they are also agents in their own learning and in their own lives. They should be prepared to do something with what they learn. (ここまでにすでに、いいことがたくさん書いてあったのですが、窮めつけはこのagencyという考え方です。★いい日本語にできる方は、ぜひ教えてください。★ 一人ひとりが知ったことをアクションに移せる力をもっていると信じることの大切さです。従って、知ることは手段に過ぎません。また、生徒を学びや自分たちの暮らしの中での主体的なアクターとも位置づけています。それは、常に指示されることで動く人間ではないということです。何らかのアクションに移すことを前提に歴史を学ばれた体験のある方はいますか?)

194 “a meaningful connection with the past demands, above all, active engagement…(過去と意味のある形でつながるためには、主体的に取り組むことが不可欠です。そんな環境が私たちの歴史の授業にはあったでしょうか?)We must enter past worlds with curiosity and with respect.(それには、好奇心と尊敬も不可欠です。特に、小学校~高校で歴史を学ぶ際に、これらは歴史上の事実を知ることだけからはなかなか得られませんから、教師の役割が極めて大きいことを意味します。そのために存在するといってもいいぐらいに。)” Knowing about the past then, is never enough ~ we must also care about the past, and care enough to use what we discover to make a better future.(そして、過去を大切にすることは、未来を大切にすること!)

Their willingness to work toward this kind of teaching and learning grows from a shared vision of their students (and themselves) as historical agent ~ reflecting on the past in order to act more wisely in the present, making more intelligent choices for the future, and expanding their vision of what it means to be human and humane. (要するに、どこかの権威が書いたものをカバーしていればいい、受け身な人間として生徒や教師を位置づけていては、どうしようもない、ということです。)

History is an exciting and ever-changing process of investigation and reflection.(最後は、歴史はとても興奮するもので、探究と熟考によって繰り返し行われ続けるものだ、と。こういう歴史を体験した方はいますか? まさに、「歴史をする」というか「歴史家になる」体験を通して学ぶという本のタイトルそのものです。)

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