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2014年8月19日火曜日

シリーズ完結作『SON(息子)』

 SONの内容紹介を、訳者の島津やよいさんが書いてくれました。

あらすじ
少女クレアは,13歳になると〈器〉の任務をあたえられ,14歳で〈産品〉を身ごもった。
やがて生まれた男児の〈産品〉は,知らぬまにどこかへ連れさられてしまう。
〈器〉は〈産品〉のことを忘れるよう義務づけられていた。
しかし,クレアにはそれができなかった。
彼女は決心する――たとえ行く手になにが待ちうけていようとも,自分の〈息子〉を探しだそう,と。
3作の登場人物が一堂に会し,『ギヴァー』の世界の謎が解き明かされる。
そして〈善と悪〉,〈力と弱さ〉をめぐる苛烈で壮大な物語が,ついに真の完結をむかえる。

読みどころ
みなさん,第一作『ギヴァー』で,「解放」に勝るとも劣らず
おぞましい習慣があったことをご記憶かと思います。
まだ幼い少女に出産をさせ,
しかもコミュニティの未来世代として子どもをとりあげてしまう,
〈出産母〉の習慣です。
(ジョナスの妹リリーが,「楽そうだから」というので
〈出産母〉になりたいと漏らすと,お母さんが
「人からあまり尊敬されない職業なのよ」とたしなめていたのが印象的でした。)

完結作『SON(息子)』の主人公(のひとり)は,この〈出産母〉です。
あらすじを知ったとき,訳者はすぐに思いました。
作者が2年前,長年「三部作」だったシリーズに新作を加えたのは,
昨今の生殖医療の進展にともない,
「代理出産」の問題を改めて書いておかねばと思ったのではないか,と。
現在,日本人男性がタイでの代理出産に関わっていたとして,
日本でも何度目かにこの問題が注目を集めています。
SON』はその意味で,のっけから問題含みの作品と言えます。

しかし,何と言っても,この作品の最大の目玉は,
『ギヴァー』ファン垂涎の,言ってみれば「壮大なスピン・オフ作品」だという点でしょう。
(スピン・オフと呼ぶには,あまりに濃密で壮大な物語ですが。)
ジョナスの脱走後,コミュニティに残された人々はどうなったのか。
あの〈任命〉の日の前後,コミュニティで何が起きていたのか。
『ギヴァー』の世界の謎を解く鍵が,これでもかというほど登場することでしょう。
あの拍子抜けするようなラストシーンや,
続く『ギャザリング・ブルー』『メッセンジャー』でも解明されなかった
「あの人物のその後」を知りたいファンにとって,必読の内容となっています。

**********

3作『メッセンジャー』(こちらも,ファンタジー性やドラマ性においては,むしろ前2作よりも優れていると言えるほど素晴らしい作品ですので,ぜひご一読を!) がようやく校了となったばかりではありますが,できるだけ早くこの完結作『SON』も訳し終えて,みなさまのお目にかけられるよう,がんばります!
                         ――訳者・ 島津やよい

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