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2012年11月3日土曜日

『ギヴァー』のコミュニティにおける評価/観察 2



Tさんの選考の際の観察についての疑問(=斜体の字)を
私なりに考えてみました。

①長老たちが入念な観察を行っているという記述
はあるが、具体的にはどのようにしているのか?
②子どもたちの行動を物かげから探偵のように
こっそり調べて、その場で手帳にペンで書き込んで
いるのか?
③でも子どもたちは観察されているのは気付いて
いるので、隠れたりせず堂々と観察しているのか?
④子どもたちは観察されると、それを意識しての
行動になったりしないのか?

→ 私が思うに、基本的にはライティング・ワークショップや
リーディング・ワークショップで教師たちがカンファランス
の時間にしていることだと思います。
(ただ、カンファランス=直接話すことはせずに。)
あるいは、私が『校長先生という仕事』を書く時に使った
シャドーイングという方法を使っているのかもしれません。
それは、本人の了解を得て、ひたすら影になってあとをつける
という方法です。1日あとをつけていると、すごいたくさん
のことがわかります。

⑤ひょっとしたら写真などを撮っていたりするのか?
それとも監視カメラがあったりするのか?
(スピーカーはあった気がする)
⑥毎日の行動をずっと尾行したりしているのか?
その場合、老人なのに子どもの動きについていけるのか?
(長老って何歳なの?)
⑦1人の長老が1人をずっと観察するのか、数人が
数人を観察するのか、それともある分野ごとに観察
するのか?
⑧観察して得たデータはやっぱりコンピュータにでも
入っているのか?

本を読んだ時に私の中では、よぼよぼのおじいさんおばあ
さんが、こっそり子どもたちを観察し、疲れて息が上がっ
ている様子が浮かび、コミカルに思えました。

→ 監視カメラを使って、という可能性もなくはないと
思いますが、その確率は低いように思います。画面を通じて
見えるものと、直接眼で、全体の雰囲気というか関係性まで
含めて見られるものとはかなり違いますから。
そうでないと、ジョナスをレシヴァーに選んだり、アッシャー
をレクリエーション副監に任命することは難しい気がします。

カンファランスやシャドーイングをした経験から言えば、
毎日尾行する必要はありません。
また、基本的には一人が数人を担当しているんだと思います。
たとえば、10人の長老がいたとして、一つの年齢層が50人
いますから。5人です。
しかし、観察は11歳のときだけではなく、最低でも3~5年
間はしています。(ひょっとしたら、もっと長い期間)
従って、一人の長老の担当は20人とか30人ぐらいはいるの
かもしれません。
学校の先生のことを思い出せば、そのぐらいの人数は大して
多いとは言えません。
判断をしかねる難しい対象(たとえば、ジョナス)の場合は、
複数の長老が観察に当たった可能性はありますが、フィオナ
のように極めてシンプルな場合は一人でも十分だと思います。

「長老」というタイトルはついていますが、いいところ50代
ぐらいまでの人たちだと思います。
日本の政治家や経済人たちのように70代、80代になっても
がんばっているという姿はないと思います。(日本においては、
公害ならぬ、老害と言ってほぼ間違いないのですが。)
欧米の政治家やビジネスマンは、60歳ぐらいになったら第一線
から身を引く人が多いです。ライフ・ステージというのをわきまえ
ているからです。従って<老年者の家>も、日本の老人ホームのように
暗いイメージよりも、第一線を引いた人から死を迎えるまでの
幅広い層を対象にしている感じがします。
要するに、欧米には結構多く存在する「リタイアメント・ビレッジ」
の感じです。(いたって元気の人から、介護を必要とする人まで
その幅は広いです。それに対して、日本の老人ホームは残念ながら
「介護施設」になっています。そのあり方はまったく違います。)

そういえば、<主席長老>は女性ですね。
そして、あまり年齢を感じさせない話し方だったと思います。
ジョナスの<リシーヴァー>への選択の説明を聞いていて、そう感じ
ました。

Tさんの質問のおかげで、いろいろなことを考えることができました。
ありがとうございました。

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