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2014年3月27日木曜日

『医者という仕事』



南木佳士さんの『山中静夫氏の尊厳死』は、解説なしで、そのまま読んでいただくのがベストだと思いますが、彼のエッセイ集である『医者という仕事』から気になってメモを取った部分を紹介します(数字は、ページ数です)。見事なぐらいに日本社会というか現代社会を表している気がしたからです。そして、もちろん『ギヴァー』のコミュニティと比較するとどうなのかな、とも。

14 丸谷才一氏のエッセイの中に医者に向く人の三条件というのが出てくる ~ 丈夫な体、優しい心、まずまずの頭。特に最後の項目は、少なくとも臨床に携わっている医者ならすぐに納得できるであろう。切れすぎる頭は病人を診る臨床には適さない場合が多い。それにたぶん優しい心と共存できにくいからだと思われる。

43 働き盛りの医者仲間たちと雑談し、話題が大学受験の頃のことに及ぶと必ず出てくる結論がある。
 今、俺たちがやっている仕事の内容から考えて、あれほど難しい入学試験は必要なかった。そして、入試の時に最も問われるべき資質は、学力ではなく優しさであった、と。
 それなら入試の方法を改善して、本当の優しさを持った若者が医学部に入れるように面接を重視したら、と雑談は進むのであるが、得られるのはいつもおなじ悲観論のみ。
 大学に残って出世競争に勝ち抜いて偉くなっていった連中に、「優しさ」なんていうものが判定できるわけがない、と。
 患者としてはなんとか自分とウマの合う医者を捜し出すしかない。

65 給食を食べる時間から、校庭で遊び回る時間まできっちりと決め、それに素直に従う子をよい子と認定するシステム。短時間に多くの計算や暗記ごとができる子を褒めたたえるシステム。実は私はこのシステムにうまく乗って学業を終えた方の生徒であった。システムの中での立ち回り方をよく心得たかわいげのない生徒であった。

211 日本人はいつから自分だけは死なないという幻想をいだくようになってしまったのだろうか。

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