『ギヴァー』がすでに映画になっていることは、このブログでも何回か紹介してきました。
今回は、『ギヴァー』シリーズ訳者の島津やよいさんからのメッセージを紹介します。
昨年8月の全米公開以来、すでに世界約60カ国で封切られた映画『The Giver』。ようやく日本のギヴァー・ファンにも観る機会がめぐってきました。来る9月5日、渋谷HUMAXシネマを皮切りに、全国ロードショーが始まります!(上映館・各館公開日などの詳細は、近々アップされる予定の公式サイトgiver-movie.comでご確認下さい。本日7/23段階ではまだアップされておりません。)
ファンのみなさまには申しわけないのですが、日本側の配給会社さんが字幕付きDVDをご手配下さいましたので、一足お先に鑑賞させていただきました。
小説の映像化というのは、残念ながら原作の愛読者を幻滅させるケースが少なくないように思います。その点を肝に銘じて、期待しすぎないようにしました。それはけっして映像作品を軽んじるということではなくて、過剰な思い入れを排して、リラックスして楽しみたかったからです。ところが、あにはからんや大傑作で、約1時間40分、夢中で見入ってしまいました。細かいところでは原作の設定を逸脱している箇所もあるかもしれませんが、全体としては原作の魅力を損なうことなく「映像翻訳」した良質なエンタメ作品だと思います。これだけおもしろく仕上がっていれば、原作を知らずに映画を観た人も、まずは『ギヴァー』を、続いてシリーズ続刊を読みたくなるのではないかと期待しています。以下、どこがどう良かったのか、ネタバレに気をつけながら述べさせていただきます。
まず最大の特長は、映像化の困難を構成と脚本がみごとに解決している点です。たとえば「コミュニティ」「よそ」などに代表される独特の世界観や「色」の問題が、じつにうまく視覚化されています。これは原作の解釈に確信がなければできない仕事です。筋金入りの原作愛読者であるジェフ・ブリッジス(プロデューサーでもあり、〈ギヴァー〉役を演じました)の面目躍如というところでしょうか。作者ローリーさんが感激したのも当然かもしれません。
それから、人間関係を(原作のニュアンスを損ねないていどに)微妙に再編することで、映像化に必要な緊張感を生みだしている点も注目に値します。とくにローズマリー(テイラー・スウィフト)や〈最長老〉(メリル・ストリープ)が興味深いキャラクターとなっています。
そして、エンタメ作品としての完成度がきわめて高い!
ややてんこ盛りの感はありますが、原作の静かで乾いた表現のなかから、みごとにクライマックスを創出しています。原作で消化不良だったいくつかの問題が、映像化によってひとつの解釈をあたえられているのも嬉しいおまけです。
もういちど、次はぜひ映画館の大スクリーンで観てみたいと思っております。
最後に、訳者として、「記憶を注ぐ者」「記憶の器」という邦訳の表現が字幕で踏襲されていることが、すごくうれしかったです。GiverとReceiver の訳語にはずいぶん悩んだので、報われた心地がしました。
写真は、ギヴァーとジョナス(ギヴァーは、オスカー俳優のジェフ・ブリッジス。今回は制作も)
写真のクレジットは、©2014 The Giver SPV,LLC. All Rights Reserved.
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