前回のクリスマスのシーンの続きです。
祖父母の存在を知った後でのやり取りです。
うまくいっていますよね? ぼくたちのコミュニティのやりかたは。想像もしたこともありませんでした。ほかのやりかたがあるなんて。さっきの記憶を受け取るまでは」
「うまくいっているさ」〈ギバー〉は同意した。
ジョナスはためらいがちに言った。
「でもぼく、すごくいいと思いました、さっきの記憶。あなたがあの記憶を好きな理由がわかりました。あそこで感じたことのすべてを表すぴったりした言葉はつかめませんでしたが、あの部屋にはとても強い感情があふれていました」
「愛だよ」〈ギバー〉が告げた。
「アイ」ジョナスも口にしてみた。初めて聞く言葉であり、概念だった。(174~5ページ)
そして、その後
「ぼく、考えてたんです……いや、わかってはいるんですよ。あんなふうに〈老年者〉と一緒に生活するのが、非実用的なやりかただということは。あれじゃ歳をとった人たちが、今のように満足なケアを受けられないですもの。だからこそ、ぼくたちはより適切なやりかたを選んだ。だけどとにかく、ぼくは考えていたんです、いや、感じていたんです。こういうのも悪くないな、って。こういう暮らしだったらいいなとさえ感じました。それに、あなたがぼくの祖父だったら、なんて考えたりもしました。記憶の中のあの家族は、何というか、もう少し―」
ジョナスはそこで口ごもった。欲しい言葉が見つからなかった。
「もう少し、完全だ」〈ギバー〉が示唆した。
ジョナスはうなずくと、正直に言った。
「ぼく、愛という感情が好きです」言いながら、誰も聞かれていないことを再確認したくて、そわそわと壁のスピーカーに目をやった。
「ああいう暮らしかたもできればいいのにと思います」と声をひそめて言うと、すぐにあわててつけくわえた。
「もちろん、よくわかっています。うまくいかないだろうってことは。それに、現在のようなやりかたが構築されるべきだったということも。あんな暮らしかたは危ないですからね」(175~6ページ)
この辺、ホームを訪ねた後に考えていた著者本人のものではないかと思わせられます。
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