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2013年3月17日日曜日

『ギヴァー』と関連のある本 90



 『ギヴァー』の中で印象に残るシーンのひとつが、戦場で死ぬ兵隊のシーンです。
 アメリカの歴史を紹介したときにも書きましたが、著者のロイス・ローリーは戦場に出ることのない司令官のような立場を書くこともできたとは思いますが、一兵士について書くことを選択していました。(10代前半を主な対象にして書いていましたから、すべてに関して身近に感じられる題材を選んで書いていたように思われます。)

 今日紹介する本は、『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』(アレン・ネルソン著)です。
 日本人が、自分が戦争で人を殺した体験を語った本はあるでしょうか?
 たとえば大岡昇平の本も、そういう視点から書かれた本ではないですよね。
 原爆体験を含めて、戦争の被害者体験は山のようにありますが★、加害者体験(それも、人を殺すことがどういうことなのか)について書かれた本は。
 「国を守る」の名のもとにしていくことは、軍隊にとった人たちを殺人マシーンにしていくことだということが、この本を読んでよくわかります。★★
 そして、アメリカにとって沖縄というところがどういうところなのかも。(大統領と首相のあいだを含めた政府高官の話からは、決して見えてこないことが。視点が違うと、見えるものも違う!!)


★ もちろん、その大切さを否定するつもりはありません。そして、「殺さない」と決めて、それを実行した体験記も大切です。

★★ 日本にとっての15年戦争も、こういうことだったと思うのですが、なかなか一兵士の視点からは書かれることがありません。あったら、ぜひ教えてください。
あの司馬さんですら書けませんから。(幸いにも、人を殺す体験をしていなかったから?)「坂の上の雲」でも戦争シーンはたくさん出てきますが、基本的にはゲーム感覚に近い描写といってもいいぐらいかもしれません。(よく言えば、俯瞰的な書き方です。)それに対して、ネルソンさんはゲームと実際はまったく異なることを語ってくれています。それは、人を殺したという体験のあるかないかの違いのような気がします。
人を殺すということは、普通の心的状態にいられないことを意味し、ベトナム帰還兵をはじめ、イラクやアフガニスタンからの帰還兵たちの少なからぬ人たちは「心的外傷後ストレス精神障害」をかかえ苦しみました。これは、ベトナム戦争後にわかったことで、日本がしでかした15年戦争中およびその後には、まだわかっていませんでした。
  ちなみに、あのベトナム戦争では58,000人のアメリカ兵が死に、200万人以上のベトナム人が死んでいます。
  いったい何のために?
  ロイス・ローリーさんが描いた『ギヴァー』のシーンにも、その理由は書かれていませんでした。

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