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2010年12月6日月曜日

『夢に迷う脳』 3

 今回の主なテーマは、記憶と夢との関係についてです。

158 1960年代、精神分析を信奉する人たちの多くは、生とは、あらかじめ心の中に書き込まれたシナリオを演じることだと信じていた。しかし今日となっては、ほとんどの精神分析学者は次のように主張するだろう。私たちは、生を持続していく中で新たな場面に対処するために過去の場面を引き出しながら、自分自身でシナリオを書いているのだ、と。ここで参照されるこの場面こそ、私たちの記憶そのものである。フロイト自身が主張したように、重要なのは、実際に何が起こったかではなく、起こったことのうち何を覚えているか、なのだ。

→ 意識的に(あるいは、無意識も含めて?)自分が覚えている(=記憶している)ことこそが重要!!

171 記憶それ自体を観察することはできない。記憶は一連の電気パターンとして脳の中に蓄えられる。想起とは、ひとつの行為 ~ つまりその一連の電気パターンを活性化することである。

 記憶は潜在意億と顕在記憶とに分けられる。潜在記憶は認識のみに関係している。顕在記憶は活発な想起と関係している。ほとんどすべての記憶は、常に完全な無意識状態にある。記憶とはほとんど無意識な行為である。この、いわゆる「手続き記憶」というものは、運動パターンのように比較的に自動的なのである。

 ならば記憶を思い起こせない時、それらはいったいどこに蓄えられるのだろうか? 記憶は脳全体に広く分散した神経活動のパターンとして表れるということがわかっている。これを裏付ける例として、たとえ脳の特定の部位に障害がおきても、ヒトや動物の手続き記憶までが消えてしまうことはない。

172 記憶を分散して蓄えることにかんして、もっと積極的な理由がある。情報をできる限り多くの文脈や技術と関連づけることができるのだ。どの文脈が将来的に必要となるかはいつも明らかとは言えないから、新しい情報をできる限り関連のある文脈と結びつけることが有益なのだ。

→ 人が記憶する仕組みは、図書館やコンピュータのファイリングとは根本的に異なるシステム。

177 夢の記憶機能とはいったいどんな点であろうか? 私たちは記憶を強化しようとして夢を見ているのだろうか? それとも忘れるために見るものなのか?

 まだ証明には至っていないものの、心脳がノンレム睡眠とレム睡眠の2つの状態を行き来する理由のひとつは、記憶を強化し再編成することだと私は考えている。

178 記憶を長期的に符号化するために睡眠を必要とする、という説はまだ確定的ではない。とはいえ、このことを支持する証拠は数多くある。私たちは、眠ることによって、夢を見ながら一日の記憶を再活性化する。その時、心脳状態に変化が生じる。夢は記憶を短期記憶から長期記憶へと変化させる。これはおそらく、睡眠中に偏在するアセチルコリンによるものだろう。

180 夢には、記憶の「固定」「分散」「超連合」「手続き化」の機能を強化する特徴がある。

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