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2010年12月4日土曜日

『夢に迷う脳』 1

 これも、『ギヴァー』の内容に関連した本とは言いがたいので、書名で紹介する形を取ります。サブタイトルは、「夜ごと心はどこへ行く?」です。書いた人は、J・アラン・ホブソンで、睡眠研究界の第一人者だそうです。
 読んでもわからないところが結構あり、飛ばし読みもありますが、ヒットしたところを抜書きしました。


22 脳と心を切り離して考えることはできない、私はそう確信している。頭蓋骨の中にある物体としての脳と、誰にも観察できない第五次元に自分を漂わせている霊妙な心に、違いなどない。脳と心は分かつことのできないユニットなのだ。

 脳と心はひとつであるという私の考えは、自分が主観的に経験する、あらゆる意識状態の性質が、脳の状態によって決定されている、という認識から生まれるものだ。脳内の神経細胞の間で何か特定の活動が起きているために、私は夢を見るのだ。そして、脳の活動がこれまた特殊な方法で突如として変化するため、私は目覚めるのである。そこで私はこのユニットを「心脳」と呼び、その主要な活動様態 ~ 夢を見たり目覚めたりすること ~ を「心脳状態」と呼ぼうと思う。

 この考えは論理的で問題がないように思えるにもかかわらず、科学と人文科学の双方で異端とされている。多くの科学者は、脳を生物学的な中枢処理装置と見なし、心の存在を否定している。そして多くの人文科学者は、心をある輝かしい実体 ~ それ自体で存在するもの、つまり、いかなる物理的存在をも超越した、自覚を持った精神 ~ であると記述する。このように、人間は心なき脳、または脳なき心として描かれ、その二つは相容れることはないと考えられている。脳は身体を操作する ~ つまり、脳は見ること、歩くこと、食べ物を消化することを可能にする。一方、心は思考や人格を操作する ~ つまり、周囲の状況は人を考え、感じ、判断を下すことを可能にしている、といったように。

→ 『ガリバー旅行記』を思い出してしまいました。ガリバーは自分が来たもとの場所に戻りたくて、アカデミーの先生たち(いまの大学の教授たち)に尋ねます。しかし、みんな自分の狭い専門領域にこだわるだけで、ガリバーのほしい情報を提供してくれる人は一人もいませんでした。「専門バカ」の弊害は、すでにスウィフトの時代からあったのですね。(ちなみに初版は1726年ですから。17世紀の後半~18世紀の初頭にはそういう風潮はすでに風刺に価する状態としてあったことが伺えます。)そして、300年経ったいまも見事なぐらいに引きずっているのですから、すごいことです。

35 心脳状態という概念を用いることの最大の利点は、覚醒、睡眠、夢という経験を包括的に扱えることだ。 → 111ページの図を参照

54 睡眠研究により、もっとも深い眠りについているような時でさえ、脳は休むことなく情報処理を行っていることがわかっている...脳の大方の神経細胞は昼でも夜でも、四六時中発火しているのである。

55 まだまだ理解しなければならないことが山ほどある。脳内にはおよそ1千億個もの神経細胞があり、神経細胞一つひとつは一万個の相手と接触し、それぞれ一秒間に100個の情報を送り出している。情報の総量を控えめに見積もっても一秒間に10の27乗ビット分のデータ量に達する。気がおかしくなりそうな値である。

→ 宇宙と脳は、似ているというか同じだと言った人がいたと思いますが、まさにその通りなんですね。

56 睡眠の機能のひとつは、心脳が故障する可能性を減じていることにあるのではないか、ということだ。心脳も、ばね式機械と同じように故障がつきものだからだ。

→ ばね式機械と同じなのかどうかは疑問ですが、「故障はつきもの」というのは納得いく気がします。それを起こさないためにも睡眠がとても大切なんですね。

  「決定論」は、心脳とは葛藤のシナリオを必然的に再現するように運命づけられたものだとする、フロイトの誤った予測を招いてしまった。心脳パラダイムは決定論の本質は認めるものの、心脳は非常にやっかいなシステムのため、単純に繰り返すことなどできないと主張するものだ。心脳は絶えず新しい状態へ変化している。

57 私たちの脳と履歴は刻一刻と変化するため、まったく同じ情報を持った状態になることは二度とない。良かれ悪かれ、私たちは表象の内部貯蔵(これを記憶と呼んでもよい)を絶えず更新していく必要があるのだ。

→脳の状態は刻一刻と絶えず新しい状態に変化している、という認識はとても大切な気がします。固定化してしまうことによる弊害が、確実に教育の場で起こっていると思いますし、他の領域でも起こっていると思います。

 それをどのように処理しているのだろうか? 覚醒から睡眠、そして夢へと心脳が絶え間なく繰り返すことで処理しているのである。そこには情報を収集する面と、情報を処理する面がある。この情報サイクルは呼吸と同じように無意識に行われる。私たちはこのことをいちいち意識に留めておく必要はない。ただ起こっているのである。 →111の図

 精神医学は深刻な危機に陥っている。精神分析とは明らかに不首尾に終わった万能薬であり、また、薬物頼みの精神医学も明らかに万能薬のなり損ねである。そう、私たちは失敗に向かって突き進んでしまっている。 → いまこそ、精神分析と薬理学と脳の認識と科学の統合が求められている、とホブソン氏は強調しています。

111 心脳空間プロット = AIMモデル


 → この図は、この本の中の一つのハイライトと言えるかもしれません。
 右上の覚醒状態と右下のレム睡眠の間を行ったりきたりするというモデルです。詳しくは、ぜひ本文をご覧ください。

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