哲学路線で「理想と現実」をテーマに考えていたのですが、昨日書いた『ワールド・スタディーズ』(サイモン・フィッシャー&デイヴィッド・ヒックス著、国際理解教育センター編訳・発行)と『テーマワーク』で扱っているコンセプトを読み直したら、私にとっては哲学で扱うテーマと同じか、それ以上に大切なものに思えてきたのです。(ひょっとしたら、同じことなのかもしれません。同じことを異なるアプローチを取っているだけのような気がしないでもありません。)
もう一度、書き出します。『ワールド・スタディーズ』の10のコンセプトは、
「似ている点・異なる点」「相互依存」「コミュニケーション」「公平さ」「力の分配」「原因と影響」「価値観と信念」「協力」「対立」「変化」 です。
また、『ワールド・スタディーズ』を通して身につける知識・技能・態度は、
① 知識(「わたしたち」と「他の人々」、豊かさと貧しさ、平和と対立、わたしたちの環境、地球の未来)
② 技能(探究、コミュニケーション、コンセプトの把握、クリティカル・シンキング★、政治的スキル★★)
③ 態度(人間としての尊厳、好奇心、共感、異文化の受容、正義と公平)
この本を知ったのは、1986年でしたが、今考えても10のコンセプトとそれぞれ5つずつの知識・技能・態度はすばらしいと思います。こちらの方には、私自身ずっとこだわってきました。中でも、秀でているのは技能でしょうか? 教育では、これらこそが大切であるにもかかわらず、日本の教育では無視されているものばかりです。
もちろん、『ギヴァー』の中でこれら全部が扱われているわけではありませんが、いい線はいっているように思います。
『ワールド・スタディーズ』や『テーマワーク』で紹介されている活動をすることで、10のコンセプトや15の知識・技能・態度を身につけていけるのですから、ぜひ体験していただきたいです。★★★
★ クリティカル・シンキングは、「批判的思考」と訳されますが、どうもそれでは半分ぐらいしか言い得ていない感じがします。「批判的だけど、とても前向きで建設的な思考」なのですが、10年ぐらい前にcriticalには「重要な」「大切な」という意味があるのを思い出し、「大切なものを選び出す力」と言っています。
★★ 日本流に言えば、「公民的資質」になると思いますが、あえてpolitical skillsを直訳しました。ニュアンスが違うので。
★★ 『ワールド・スタディーズ』や『テーマワーク』がとっているアプローチは、昨日の「国ってなあに?」の事例からもわかるように、体験学習やグループ学習や問いかけを重視しています。そういう方法でないと、コンセプトや技能や態度は身につかないようです。
『ワールド・スタディーズ』の中にはたくさんのアクティビティー(活動)が紹介されているのですが、それらのほとんどが『ギヴァー』の内容と関連づけられると言っても間違いではないぐらいです。
返信削除その一つに、「今年は2423年です。あなたは、いま、宇宙船に乗ってよその惑星に向かっているところです。他にもたくさんの人が載っています。あなたがたの目的は、地球の人々にとっていい例となるような新しい社会をつくりことです...」という活動があります。(160~1ページ)
その応用例として、「長い間宇宙を旅するための宇宙船を考えてもらうこともできる」ともあります。(161~2ページ)
『テーマワーク』にも同じように、たくさんのお薦めアクティビティーが紹介されています。