はじめまして、『ギヴァー』を担当した編集者A(40歳・女性)です。
(匿名でお許し下さい・・・編集者は「黒子」なので。)
吉田さんから、カヴァー・デザインについてお訊ねがあったので、
以下、ことの次第をお話しいたします。
訳者の島津さんから本書の訳稿をいただいた日、その夜ひと晩で一気に読んでしまいました。
このブログでみなさんが話しあっていらっしゃるとおり、ほんとうに魅力的な物語だと思いました。
そして、一読した時から、「雪景色」が私の脳裏に焼きついてしまったのです。
これは、なんて悲しい、なんて寒々しい、なんて苛酷な雪の丘だろう。
人はみんな孤独で、人生はこんなふうに冷たい雪景色のようなものだともいえる。
しかしだからこそ、愛すべき者をせいいっぱい抱きしめ、ぬくもりをわかちあうのだ・・・
私は本書のエッセンス(のひとつ)を、こんなふうに理解したのでした。
で、「雪しかない!」と。
翌日、島津さんと校正の段取りについての打ち合わせを終えると、
私はさっそく「絵さがし」にとりかかりました。
本のカヴァーって、ほんとうに難しいんです!!
編集者は通常、まず著訳者のご希望をきいて、
必要なら意見や助言も申し上げて(おもに販売戦略上の視点から)、
それからデザイナーさんに相談します。
(ちなみに、島津さんは「カヴァーは出版社の領分だから」と、全面委任して下さいました。)
ふつう、私たち編集者や著者・訳者は、どうしても「本の内容に即して」とか、
「本の内容を視覚的に表現しつくせる図像を」等々と考えてしまいがちです。
ところが、実際にはカヴァーって、そういうものじゃないんですね。
ブックデザイナーの方々にしょっちゅういわれるのが、以下のようなことです。
「あんなちっちゃいスペースに、いろんなこと詰めこんで表現しようと思うと、
ゴチャゴチャしてかえって逆効果ですよ!
カヴァーっていうのは、できるだけ要素を少なく、
目で見て一発でイメージが伝わるようにしないと、ビジュアル効果は出せないんですよ!」
・・・たしかに!『ギヴァー』だって、本の外周を計ってみれば、
せいぜい12センチ×19センチていどですものね。
たとえば『ギヴァー』の場合を考えてみましょう。
この本が私たちに語りかけてくるテーマや、印象的なイメージを、
めいいっぱいカヴァーに盛り込もうとしたら、どうなるでしょう?
少年、老人、赤ちゃん、雪景色、橇、りんご、本棚、花、夕焼け、自転車・・・
これらすべてのイラストか写真を並べちゃったりして。
これでは、「何の本じゃい?」ということになってしまいます。
これはもちろん極端な例ですが、カヴァー・デザインの現場では、
似たような事態が発生することもままあります。
・・・というわけで今回もふだんと同じく、
「一発でイメージが伝わるイメージとはこの場合、何ぞや?」
をまず考えなければならなかったわけですが、
幸運にも今回はこれが、すでにしょっぱなから決まっていたわけです。
(といっても、私ひとりの主観ですが・・・)
長々とすみません。続きは次回にもちこさせて下さい。
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