以下は、ギヴァーの普及協力者のKさんが書いてくれた『ギヴァー』の感想/紹介文です。
この小説の舞台である社会では、人々は色を見ることができなくなっている。主人公のジョーナスが、友人のアッシャーとリンゴのキャッチボールをしているときに、リンゴがほんの一瞬空中で「変化した」。その時のジョーナスは気づかなかったが、ジョーナスはリンゴの「赤」を見たのである。
このように、社会の他の人々から見れば、「彼方を見る」ことのできるジョーナスは、社会から選ばれて「社会の記憶を受け継ぐ者」となった。そして、「記憶を注ぐ者The Giver」である老人から、その社会が住民には秘匿してきたさまざまな「記憶」を一つずつ譲り受けていく。その過程で、ジョーナスは、自分がそれまで何の不満や疑問も感じずに生きてきた社会の、底知れぬ不気味さに徐々に気づいていく。
記憶を受け継ぐ修練の中で、すべての色を獲得したジョーナスは、「記憶を注ぐ者」に向かってこう叫ぶ。「どんなものにも色がないなんて、そんなのひどいです!」「ひどい?どうしてだね?」「その・・・すべてのものが同じなら、選ぶということがないじゃないですか!」
色こそが多様性を形作るものなのだ。日本語の「いろいろ(色々)」という意味の深さを考えさせられた。そう言えば、仏教の経典の一つでは、「色(しき)」が、この世の事物の根本的ありようを表すことばであった。
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