4月中旬から5月いっぱいにかけては、『ギヴァー』が扱っている「哲学のテーマ」について紹介しました。その後は、本の中で象徴的に使われていると思われる「もの」について考えました。こんどは、本の主題(=テーマ)と思えるものについてです。
これも、国語の授業のやり方に則ってすすめるわけではありませんから、「正解」があるわけではありません。読み手が「これは、主題だ!」と思ったものは主題でいいわけです。本来、主題というのはそんなものだと思うのですが、どうも国語の授業になると「正解」の主題が存在します。読む視点や読む人が持っている経験や知識が違えば、見えるものが違うのですから、誰もが等しく納得する「正解」の主題などあるはずがないのですが...
より多くの人が納得するかもしれない主題はあり得ても。
最初に扱いたいテーマは、「絆」です。
これは、『ギヴァー』と関連のある本 26で紹介したテーマでもありましたし、ひょっとしたら『ギヴァー』と関連のある本 18として紹介した絵本の『てん』のテーマの一つだったかもしれません。
この本全体が、ジョナスの「絆」を見出す物語とも言えなくはないぐらいです。
最初は、家族や友だちとのつながりでそれなりに満足していたジョナスですが、ギヴァーと出会い、たくさんの記憶を注がれる中で、違う次元のつながりである「絆」をしってしまったという感じです。
まさに、「絆さえできてしまえば、何も怖がるものはない」というか「何もできないことはない」という感じです。
ジョナスは絆を結べたギヴァーに一緒に来てもらいたかったのですが、ローズマリーのことや多くのコミュニティに残される人たちのことを考えるとギヴァーの「私はここに残る」を受け入れざるを得ませんでした。
ジョナスとゲイブリエルとの絆も、ジョナスとギヴァーと同じレベルの絆になっていたのでは、と思えます。一切の言葉を介さずに、それが描かれているのが、またなんとも言えません。そして、「絆」は受け継がれてこそ価値があるということも。
さらには、「つながり」ないし「絆」は、人との間だけにあるのではなく、木々、花、鳥や魚などの自然との絆も象徴的に描き出してくれています。
そして、ジョナスが住むコミュニティは、そうした「絆」を一切シャットアウトした(というか、表面的なものにした)社会として描かれていました。
「大切な絆を忘れないでください!」というローリーさんのメッセージが本のあちらこちらから伝わってきます。
(参考: A Reading Guide to The Giver, by Jeannette Sanderson, Scholastic, p. 33 - 34)
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