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2011年9月10日土曜日

世の中や他の本を『ギヴァー』の視点でみる

過去2年間ブログを書き続けている間(というか、『ギヴァー』に出会ってからだと、約4年間になりますが)、私は世の中で起きていることや他の本を『ギヴァー』の視点でみる習慣がついてしまったようです。
 あなたには、そんな本がありますか?
 そんな本を持つことは、そもそもいいことなのでしょうか? それとも、危険なことでしょうか?

 少なくとも、この習慣を身につけたことで、これまでなら出会うことのなかった分野の本にまで出会えました。中でも最大のヒットは、哲学関連の本です。
 私は、哲学書は一切読んだことがありませんでしたが(というか、トライしてもおもしろくなくて読めませんでしたが)、『ギヴァー』を読んだ後は、かなりスムースに読めましたし、頭に入ってきました。というのも、『ギヴァー』に盛り込まれている多くのテーマはすべて哲学のテーマだったからです。 

 過去2年間に『ギヴァー』と関連のある本として紹介した本は、すでに80冊を超えていますし、間接的に関連あるとした本も30冊ありました。(テーマも、ジャンルも、極めて多様です。「こんな本まで関連があるのか!」と思うようなものがたくさん含まれています。)
 『ギヴァー』の中だけに閉じこもっていたくないので、これからも関連のある本探しを楽しみたいと思っています。

 私一人では見出せないのもありますから、関連のある本をご存知の方は、ぜひ教えてください。

2011年9月8日木曜日

いま、18世紀の自給自足の生活営むアーミッシュ

倉本さん(?)関連で、3冊の本を読みました ~ 本当は、歴史の多様性、社会の多様性に関心があって読んだのですが、結果的には倉本さんを扱った2回の書き込みと『ギヴァー』にも関連する内容でした。

  『カレジの決断』アイビーン・ワイマン
  『アーミッシュの謎』ドナルド・B・クレイビル
  『プレイン・ピープル ~ アーミッシュの世界』栗原紀子・文、長谷川朝美・写真

 『カレジの決断』は、「現代アメリカで、移民当時の農耕や牧畜によって自給自足の生活を営むアーミッシュの人々。ペンシルバニア州の美しい自然やあたたかい家族にかこまれて育った少女カレジ(Courage=勇気という意味)は、大人に近づくにつれ、アーミッシュのしきたりに疑問をもちはじめる。その中には、「高等教育を受けてはいけない」が含まれており、アーミッシュのおしえと、自分の意志のどちらにしたがえばいいのだろう」と悩む少女の物語。結果的に、カレジはジョナスと同じように、家とコミュニティを出ます。

 しかし、後の2冊を読むと、カレジのように自分の家族やアーミッシュのコミュニティから抜け出す決断をする人は5人の一人もいないようです。実際、アーミッシュ・コミュニティは人口が減っているどころか増え続けています。それを取り巻くアメリカおよびカナダ社会はすごい速度で便利になり続けているにもかかわらず。この多様性がなんとも素晴らしいです。残念ながら、日本にはその多様性がありませんから。

 『プレイン・ピープル ~ アーミッシュの世界』の著者の栗原さんはエピローグで、1997年秋にアメリカのABCテレビが放映した特別番組「幸福の秘密」を紹介しながら、再びアーミッシュ社会の特殊性について触れています。

 「各界の著名人や一般人の声を集めて、幸せとはなにか、何が幸せをもたらすかを討議するという内容だった。
 アメリカ人で最も幸福度が高いのは誰かという質問に対し、多くの研究者がアーミッシュの名前をあげたと司会者は語った。
 最後に司会者はこう締めくくった ~ アーミッシュのように幸福でありたいとすれば、私たちは快適で便利な現代生活を捨てなくてはなりません。私は自分がそうすることはないと思います。なぜでしょうね。幸せより大切なことはないとは思うんですけどね・・・。」
 これを受けて、栗原さんは、「私にはその理由が少しだけわかるような気がする。・・・この半世紀に起こった技術の進歩はものすごいものだった。いつのまにか私たちはこのような変化に適応し、あたりまえのものだと思うようになった。豊かになることはいいことだし、便利になるのもいいことだ。でもたぶん、私たちはその代償を支払っている。」(206ページ)

 「アーミッシュになりたいか、と問われれば、それは無理だと私は答えるしかない。時計の針を戻すことができないように、知ってしまった知識を忘れ去ることはできず、植え込まれた価値観を白紙に戻すことはできないからだ。
  それでもアーミッシュのような人びとがこの地上に生きているということは、とてもすばらしい。」(207ページ)

→ 『ギヴァー』と通じる部分が多分にありますし、倉本さんが描いている「北の国から」にも、そして山田洋次監督が「寅さん」で描き続けた妹・桜の柴又のコミュニティにも。

 なお、アーミッシュの子どもたちは、8年生(14歳)までしか学校に行きません。それも、昔のアメリカの農村地帯そのままのワンルーム・スクールです。要するに、1年生から8年生まで同じ教室で学びます。
 1930年代の後半には多くの州で、16歳(日本の高校1年)までが義務教育になりましたが、アーミッシュは強く抵抗しました。その結果、1972年に連邦最高裁はついにアーミッシュの主張を認めたのです。
 <高校およびそれ以上の高等教育は、アーミッシュの価値と生活様式に著しい変化をもたらすものであるがゆえに、アーミッシュは反対する。高等教育は知的業績や科学の知識、自我の育成、競争、社会的成功、そして他の生徒との社交能力の育成を重視する傾向がある。アーミッシュの社会は、体験と通して学ぶことを重視しており、知的な生活よりも善良な生活を、技術的知識よりも賢さや知恵を競争よりも共同体の幸福を求め、現代社会との統合よりも分離を重視するのである>(『プレイン・ピープル ~ アーミッシュの世界』の143ページ)

 アーミッシュ・コミュニティの絆と、日本社会(“世間”)の絆の違い についても大いに考えさせられます。(151ページ) 

 なお、ハリソン・フォード主演の映画『刑事ジョン・ブック 目撃者』の舞台のほとんどは、アーミッシュの村なので、彼らがどのような生活をしているのかよくわかります。しかし、この映画の最大の被害者は映画の撮影に協力したアーミッシュの人々でした。映画のおかげで来てほしくない観光客が飛躍的に多くなってしまったのです。

 ちなみに、アーミッシュが多く居住するペンシルバニア州のランカスターは、あのスリーマイル島原子力発電所からわずか南東に40kmほどの位置にあります。結果的には健康被害はなかったとされる原発事故ですが、電気の使用を拒否しているアーミッシュの社会も巻き込む形で起こってしまったことは皮肉です。

2011年9月5日月曜日

『ギヴァー』届きました

5日に、荻野聡さんからいただいたメールです

この本はいろいろと考えさせらえれる物語ですが、おもしろくて一気に読ませてくれました。
本書を読んで今の当たり前にある社会や日常生活について考えずにはいられません。
画一された社会はどうなっていくのかを思うとぞっとします。
そんな中で『ギヴァ-』の存在が生きてくるのですね。
「与える人」になれるようなスタンスでこれから生きていこうと思わずにいられませんでした。
本書は3部作シリ-ズの1作目だそうで、次の翻訳を是非お願いいたします。