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2019年4月12日金曜日

いまの医療は、人を死なせない



医療の進歩によって、人をなかなか死なせなくなっています。
それは、果たしていいことなのでしょうか?
植物人間化した状態が、必要以上に長く続いています。
これは、本人にも、家族にも不幸な気がします。★
本人も、家族も、どう対処していいのか分からずに困った状態になっています。
医者は、当然、点滴や薬の投与を止めるわけにはいきませんし、家族も止めてほしいとは言えません。
本人は、もうそれが言えるような状態にありません。そして、その状態が数か月続くというわけです。★★
これは、本当に技術と医療の進歩と言えるのでしょうか?  少なくとも、ソフト面を無視したハード面のみの進歩です(ある意味で、エレベーターと同じように!)。

終末期にどう対処したらいいかは、『ギヴァー』の隠れた(大きな)テーマの一つです。
著者のロイス・ローリーが、この物語を思いついたのは両親が老人ホームに入っていた時だったそうです。一人は、からだはいたって元気なのに過去の記憶を失っており、もう一人はからだを病んでいるのに記憶は失っていないという状態を突き付けられたのでした。その結果、彼女がうみ出したのが「リリース/解放」でした!
私も、それを最初に読んだ時は「何と冷酷な!」と違和感をもちましたが、12年経ったいまになると(というか、60歳を過ぎたころからは)、「とてもいいアイディアではないか」と思いはじめています。
自分の死を選べたり、尊厳をもった死を迎えられたりするというのは、本人にとってはもちろん、家族や面倒を見る病院や介護施設の関係者にとっても、とても大切なことだと思います。
いまの日本の医療や介護は、まったくそのことを考えているとは思えません。そう言えるのは、自分自身、身近な二人の死を体感したからです。
制度というのは後からついてくるものです。大切なのは、本人がどのような死を迎えたいかです。★★★
ここ数年、そのことを考えさせられ続けています。
『ギヴァー』は、そういうことにも役立つ本です!

★ 技術の進歩でエレベーターというものができ、便利に高層ビルの上下を行ったり来たりできるようになったのですが、私たちは依然として、その中でどう振る舞ったらいいのか分からないのに似ています。でも、その時間は短いからいいのですが、この医療の進歩による生き伸ばしは、数か月の時間になります。
★★ この「死なせない」ことによって生まれているコストは膨大でもあります。
★★★ たとえば、しっかり「快復の見込みがない場合は、1週間以上の点滴はお断り」と書き残しておくとか。

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