2冊の本は、両方ともローマン・クルツナリックによる本です。
1冊目は、生活の発見 | フィルムアート社。このなかで扱っているテーマ(愛、家族、感情移入、仕事、時間、お金、感覚、旅、自然、信念、創造性、死生観)は、『ギヴァー』は、哲学書!? や 『ギヴァー』は、哲学書 その2で紹介しているテーマとかなりオーバーラップし、いずれも大切なものばかりです。
特に印象的なのは、PartⅣとして括られている信念、創造性、死生観でした。つい数十年前までは、死が生活の一部になっていたのに、ここ30、40年ぐらいは、死を見なくなった、話さなくなったことに著者は危機意識をもっています。そこで、「ライフスタイル」ならぬ「デススタイル」を提唱しています。それには、歳のとり方、死ぬ運命との向き合い方、満足して死ぬ方法が含まれます。そして「これらの技術は、開けた場で率直に死について語る文化でのみ習得することができる」と書いています。
ちなみに、たまたま1997年にオランダを訪問した時、「Death Education(死についての教育ではなく、死に向けての教育)」が盛んにおこなわれていると聞きました。それは、死に向き合う態度・グリーフケア・倫理的選択・人生の意味づけを学ぶ包括的な教育です。特にオランダでは、安楽死や尊厳死をめぐる社会的議論が活発であるため、死の教育は「公共的・倫理的・心理的」側面を強く含んでいます。
その特徴として、
・安楽死・尊厳死の理解 ~ オランダ安楽死協会が中心となり、安楽死や自己決定権について市民向けに講座や相談を提供。
・パブリック・ディスカッション ~ 学校や地域で「Death Education」「人生の終末期の選択」について対話を促す。
・医療教育との統合 ~ 医療従事者は初期教育から緩和ケアを学び、死に直面する患者や家族への支援を必須とされる。
・グリーフケア(悲嘆教育) ~ 死別後の心理的ケア、喪失体験の共有、社会的サポートの重要性を学ぶ。
死がタブー化しつつある日本とは、対極にある感がします(それも、なんと30年近く前のことです!)。
2冊目の本は、共感する人
- ぷねうま舎を読みました。これは、1冊目の「感情移入」を一冊のテーマに広げた内容と捉えられると思います。こちらでは、
共感力の高い人々がもっている以下の六つのエートスが詳しく各章で論じられています。
エートス1 共感脳にスイッチを入れる
エートス2 想像力の跳躍を
エートス3 あえて実験的な冒険に挑む
エートス4 語らう技を稽古する
エートス5 肘掛け椅子の旅
エートス6 革命を始めよう
どの章も面白かったですが、もっとも印象に残っているのは、エートス4の「語らう技を稽古する」で紹介されていた「異邦人への好奇心」と「ヒューマン・ライブラリー」です。
学校はもとより、社会全体としても、好奇心を萎えさせる場になっていますから、自分とは違う人への好奇心は大切です(それを、日々の授業のなかでやりましょうというのが『「おさるのジョージ」を教室で実現』ですので、ぜひご一読を)! スマホやパソコンは、好奇心を喚起するのに役立っているでしょうか? 語らうのには、役立っていない気がします。
「ヒューマン・ライブラリー」は、その名の通り、本を貸し出す代わりに、人を貸し出す図書館活動です。「ヒューマン・ライブラリー」で検索したり、生成AIに尋ねるとかなりの情報が得られます。