もう20年以上前の私が国際理解教育の普及に携わっていたころのことです。
カナダの先生たちを対象に行われた調査で、”The World in the Classroom: A Review of Global Education in Saskathewan School”という報告書を入手しました(サスカチュワン国際協力協議会、1989年発行)。調査には、476人の教師が回答していました。
この中で、国際理解教育/グローバル教育の目的は何ですか(大切にしたいことは何ですか)、という質問に対して、もっとも高い回答がされていたのが「批判的思考力」だったのです。
私は、「ウ~ン!」とうなってしまいました。
それには2つの理由があります。
一つは、その意味するところがよくわからなかったからです。英語では、critical thinkingですが、「批判的思考力」と訳すと間違いであることは認識できたので、「批判的に、しかし前向きに(建設的に)考えられる力」と当初は訳していました。その後、欧米では教育全般でcritical thinkingを重視していることも知りました。2000年ごろにcriticalには「重要な」という意味もあることを思い出し、そのころからは「大切なものを選び取る力」と訳しています。
二つ目の理由は、日本の教師が国際理解教育/グローバル教育で、これが大切とは言わないだろうな、と思ったことです。
そこで早速1990年に日本の教師対象にも調査してみたところ(回答してくれたのは151人。有効回答数は、147)、予想通りの回答が得られたのです。日本の先生たちにとって大切なのは、
① 共感・尊重・思いやりの態度
② 平等・公正・正義を求める態度
③ 政治経済の相互依存関係を理解
④ 発展途上国を重視した世界の知識
の順でした。それに対して、カナダの先生たちにとっては、「批判的思考力」が断然トップで、2番目以降は、「平等・公正・正義を求める態度」「共感・尊重・思いやりの態度」「政治経済の相互依存関係を理解」の順です。
調査をする前と同じく、また「ウ~ン!」と唸ってしまいました。
「いったい、この違いはなんだ!」と。
おそらく、22年後のいま調査しても同じ結果になるでしょう。
昨年、東日本大震災があったこともあり、その空気を一層強く感じます。
それで、果たしてこれでいいのだろうかと、3度目の「ウ~ン!」です。
思いやりが大切でないとは思っていません。とても大切です。
しかし、「批判的に、しかし前向きに(建設的に)考えられる力」も含めた「大切なものを選び取る力」も大切です。
両方大切です。
片方が欠けている日本、そして『ギヴァー』のコミュニティに恐ろしさを感じる次第です。
そんな中で、ジョナスは「大切なものを選び取り」そして行動に移しました。(家族やガールフレンドへの思いやりを優先せずに)
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