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2010年12月14日火曜日

『野性の実践』 2

351 近代西欧合理主義には、自我主義とならぶもう一つの特質、人間中心主義がある。つまり、人間は自然界の司会者という考え方である。これは近代西欧の自然観に明快に表れており、キリスト教的世界観から大きな影響を受けている。
 ・・・それが医学の進歩、機械文明、物質文明の発展、そして人類の幸福に貢献してきたのは確かである。しかし同時に、そうした生き方が世界各地に自然破壊をもたらし、地球の環境がいちじるしく悪化したのも事実だ。

352 デカルトの物心二元論は、心と物、見るものと見られるものを分離する。そして切り離したものを対象化する。森羅万象の有機的関連を断ち切り、部分とみなし、観察の対象とする科学的態度である。ただし、部分に注目しすぎると、全体を見失う。

 東洋的智慧の一つとして、「縁起」の思想があげられるだろう。つまり「相依相関」「関わり」の視点からものを見る態度である。

→ これは、近代西欧合理主義とは対極にある視点で、スナイダーはしっかり『華厳経』を読み込んでいたそうです。

 次に、スナイダーの特質である「視点」に触れておきたい。

 スナイダーの思想、ライフスタイルを貫く二極の視点がある。ユニヴァーサリティ(普遍性)とインディヴィデュアリティ(個別性)である。これは、スナイダーの先天的な資質に、修業で得た禅の智慧が裏打ちしたものだろう。

356 スナイダーは、「離れてみる眼」(巨視的視点・ユニヴァーサリティ)と「近づいてよくみる眼」(微視的視点・インディヴィデュアリティ)という2つの眼をもつ。そして、何より肝心なのは...一方的見方を排して、もう一つの立場から見ようとする。視点を一方に固定せず、二極のあいだを自由自在に動かすのだ。

 「視点を変えて、前景と背景とを逆にし、条件と生命を支えるものの側から見るならば、他の何百という目を通して、無数の相互関係が見えてくる」(p202)

→ ここで、訳者の重松宗育さんは、立花隆著の『宇宙からの帰還』を紹介し、「いつか宇宙飛行が禅の修業にとって代わる時代が来るかもしれない」と書いています。

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