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2013年10月7日月曜日

記憶の大切さ



 『ギヴァー』誕生の経緯は、著者が両親のいる老人ホームを訪ねたことがきっかけだったそうなのですが、特に、印象的なシーンを著者自らが本の中から読んでいたのが、以下のシーンでした。171~172ページです。

 部屋の中は人でいっぱいだった。暖炉にあかあかと火が燃え、暖かだった。窓の外は夜で、雪が降っている。部屋には色とりどりの灯りがともっていた。木の枝に赤、緑、黄色の光がきらめいている。奇妙なことに、その木は部屋の中にあった。テーブルの上では、磨きあげられた金色の燭台に立てられたろうそくが燃え、やわらかな火影をゆらめかせていた。料理の匂いがたちこめ、なごやかな笑い声がさざめている。黄金色の毛をした犬が床に寝そべっていた。
 床にはいくつもの包みが置かれていた。どれも色あざやかな包装紙でくるまれ、キラキラ光るリボンがついている。見ていると、幼い男の子が包みを拾いあげ、部屋にいる人々に配りだした。彼はほかの子どもたちに、明らかに両親と思われる二人の大人に、そして長椅子に並んで座りほほえんでいる、もっと歳かさのもの静かな男女に、順に包みを手渡していった。
 人々がめいめい包みのリボンをほどきはじめた。きれいな包装紙をはがして箱を開け、おもちゃや服や本をとりだした。部屋は歓声に沸きたち、みなが抱擁しあった。
 包みを配った子が老女のところへ歩みより、ひざの上に座った。彼女は彼を抱いて揺すり、頬ずりをした。
 ジョナスはそこで目を開けたが、しばし満ち足りた気持ちで横たわり、記憶の暖かな心地よい歓びに浸っていた。そこにはすべてが、彼が大切にすることを学んだすべてのものがあった。
「何をとらえたかね?」と〈ギバー〉がきいた。
ジョナスは答えた。「ぬくもりです。それから幸福。それにええと、家族。何かのお祝いでした、祝日の。ほかにも何かあっただめだ、言葉が見つかりません」

 そうです、クリスマスのシーンを描いています。
 私たちにはわかりますが、季節感も、祖父母もいない『ギヴァー』のコミュニティでは、クリスマスという行事がなくなってから、もう何十年(何百年?)も経ちます。

このシーンは、本の最後のところでも、描かれています。
 それは、ジョナスの頭の中だけだったのかもしれませんが・・・・

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