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2010年6月22日火曜日

『ザ・ギバー』の感想 ③

今日は、中学校の英語の先生のKさんの感想です。ちなみにこれは、雑誌『新英研』の書評にも載ります。


『ザ・ギバー』は、とても示唆に富んだ本でした。面白かったです。

あのコミュニティに住んでいたら、私はボーっとした子どもだったので早めにリリースされていたかもしれませんね。(ハハッ)

全体的には、未来への警告 という印象を持ちましたが、一番、感じたのは、「人間の幸福とは」、「記憶を語りつぐこととは」 ということです。たとえ深い苦悩や悲しみがあっても、喜怒哀楽あっての人生です。感情をもたず思考せずでは、ロボットでも代役可能だと感じます。

認めたくはありませんが最近の日本と重なる部分があることが気になりました。格差社会、少子高齢化、「生む機械発言」「赤ちゃんポスト」「高校生のボランティア必修体験」、「理想の家族~両親+子ども2人発言」、減らない自殺 ・・・・。これらの行きつく先を考えると、作品のコミュニティの様子と重なり、複雑な心境になりました。このコミュニティは異常で、恐ろしい社会です。当然、否定されるべき社会なのですが、誤解を恐れずに言うと、極端な考えですが、日本でこのままさらに格差社会や、欲、不満が広がれば、ぞっとするこんなコミュニティを肯定する人が出ててもおかしくありません。でも、実社会には、豊かな喜怒哀楽の感情や、愛、希望、知恵が沢山あり(あるはず)、ただ悲観したり、架空の社会と同一視するよりも、もっと人の力を信じた方が希望がもてます。

「あとがき」には、作者は子どもの頃に、戦後直後に日本で生活した体験があり作品を書くヒントになった とありました。少し穿った見方をすれば、日本社会を揶揄した部分や、ザ・ギバーになれる人は、目の色の薄い人 等に、アメリカ人としての作者の視点を感じます。「鏡」がでてくる箇所が、いくつかありましたが、あれは自己確認の比喩でしょうか。和訳を読みましたが、言葉を吟味して書いているはずですから、原書で読んだほうが、もっと面白いのではと思います。

あと、「雪」の記憶を思い出す場面がありました。確かイヌイットの人たちには、雪を表す言葉が何十もあると聞いたことがあります。現在、減っているなら、それは失われた記憶ですし、すでに人間が沢山の豊かな文化や自然を失ってしまった ことへの警告と受け止めました。

中学生以上対象に参加型ワークショップの教材にできそうな気がしますが、一番考えたほうがいいのは大人ではないでしょうか。

大雑把ですが、今考えたのは以上です。
何度も読むたびに、感想や、発見がありそうな作品ですね。

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