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2010年5月10日月曜日

コンセプトとは

 「コンセプト」がよくわかりません、というメールをいただきました。

 確かに!! 私は25年くらい前から、その紹介をしています(主に、教師対象です)が、ピンと来てくれたためしはありません。紹介の仕方がうまくないのと、コンセプトで学んだ体験がないことの両方が理由としてあると思います。

 再度、チャレンジしてみます!

 「概念(がいねん)、コンセプトとは、物事の総括的・概括的な意味のこと。ある事柄に対して共通事項を包括し、抽象・普遍化してとらえた意味内容で、普通、思考活動の基盤となる基本的な形態として頭の中でとらえたもの」とウィキペディアには書いてありました。

 理解できますか?
 わかるようで、わかりませんよね。

 『ワールド・スタディーズ』のコンセプトは、「似ている点・異なる点」「相互依存」「コミュニケーション」「公平さ」「力の分配」「原因と影響」「価値観と信念」「協力」「対立」「変化」だと昨日書きました。ワールド・スタディーズは、直訳すると「世界学習」、日本流に言うと国際理解教育、アメリカ流に言うとグローバル教育ですが、それを教える・学ぶ際の「切り口」がコンセプトです。

 もう20年近く前になりますが、小・中・高の社会科の先生たちに集まってもらって、社会科で扱う内容を分類・整理したら、みごとなぐらいにこれら10のコンセプトで説明ができました。これ以上に付け加える必要はありませんでした。
 実は、小学校の1年生(いまは、生活科といいますが)から高校3年生まで、これらのコンセプトを繰り返し繰り返し学んでいます。
 しかし残念ながら、ほとんどの生徒はそういう意識はありません。大きくは地理、歴史、公民分野のたくさんの知識を注入されているとしか思っていません。従って、圧倒的多数の生徒は、社会は暗記科目だと思っています。もちろん、教師の多くもそう思って教えています。自分の経験がそうでしたから。
 極少数の「理解の早い」子たちだけが、自らの力でこれらのコンセプトの存在を把握し、それらをうまく活用して学びますから、飲み込みが早いというか、いろいろな新しい場面に遭遇しても、コンセプトを柔軟に活用して対処できる技を身につけています。

 これらの10のコンセプトは、12年間の社会科の中に度々登場するわけですが、社会科だけでなく、「変化」「相互依存(システム)」などはすべての教科に登場するといってもいいでしょう。
 例えば、水は固体、液体、気体に変化します(理科)。子どもの誕生と成長(保健)、料理(家庭科)、気持ちの変化や人間関係の変化(道徳)、過去形・現在形・未来形(英語)、読みやすくするための推敲や校正(国語)。体育はすべてが変化?といった具合です。
 各教科、「変化」のコンセプトだらけです。教える側も学ぶ側もそれが意識できれば、もっと私たちは変化にうまく対処できるようになると思います。さらには、好ましい変化を作り出していくことも不可能ではないと思っています。

 世の中で生きていくには、個別の知識をバラバラに覚える(その数は、無限大です)よりも、数が限定している(全教科で、せいぜい20ぐらいの)コンセプトを理解し、かつ身につけた方が、はるかに意味があると私に教えてくれたのは、この『ワールド・スタディーズ』という本だったわけです。
 教科から教育の世界に関わらなくて良かったというのは、そういう意味でもありました。すべての教科は実はつながっているのですが、残念ながら壁としての機能を果たしてしまっており、それが、子どもたちがよく学べない原因にもなっています。

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