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2010年5月21日金曜日

『ギヴァー』の表紙

はじめまして、『ギヴァー』を担当した編集者A(40歳・女性)です。
(匿名でお許し下さい・・・編集者は「黒子」なので。)
吉田さんから、カヴァー・デザインについてお訊ねがあったので、
以下、ことの次第をお話しいたします。

訳者の島津さんから本書の訳稿をいただいた日、その夜ひと晩で一気に読んでしまいました。
このブログでみなさんが話しあっていらっしゃるとおり、ほんとうに魅力的な物語だと思いました。
そして、一読した時から、「雪景色」が私の脳裏に焼きついてしまったのです。
これは、なんて悲しい、なんて寒々しい、なんて苛酷な雪の丘だろう。
人はみんな孤独で、人生はこんなふうに冷たい雪景色のようなものだともいえる。
しかしだからこそ、愛すべき者をせいいっぱい抱きしめ、ぬくもりをわかちあうのだ・・・
私は本書のエッセンス(のひとつ)を、こんなふうに理解したのでした。
で、「雪しかない!」と。
翌日、島津さんと校正の段取りについての打ち合わせを終えると、
私はさっそく「絵さがし」にとりかかりました。

本のカヴァーって、ほんとうに難しいんです!!
編集者は通常、まず著訳者のご希望をきいて、
必要なら意見や助言も申し上げて(おもに販売戦略上の視点から)、
それからデザイナーさんに相談します。
(ちなみに、島津さんは「カヴァーは出版社の領分だから」と、全面委任して下さいました。)
ふつう、私たち編集者や著者・訳者は、どうしても「本の内容に即して」とか、
「本の内容を視覚的に表現しつくせる図像を」等々と考えてしまいがちです。
ところが、実際にはカヴァーって、そういうものじゃないんですね。
ブックデザイナーの方々にしょっちゅういわれるのが、以下のようなことです。
「あんなちっちゃいスペースに、いろんなこと詰めこんで表現しようと思うと、
ゴチャゴチャしてかえって逆効果ですよ!
カヴァーっていうのは、できるだけ要素を少なく、
目で見て一発でイメージが伝わるようにしないと、ビジュアル効果は出せないんですよ!」
・・・たしかに!『ギヴァー』だって、本の外周を計ってみれば、
せいぜい12センチ×19センチていどですものね。
たとえば『ギヴァー』の場合を考えてみましょう。
この本が私たちに語りかけてくるテーマや、印象的なイメージを、
めいいっぱいカヴァーに盛り込もうとしたら、どうなるでしょう?
少年、老人、赤ちゃん、雪景色、橇、りんご、本棚、花、夕焼け、自転車・・・
これらすべてのイラストか写真を並べちゃったりして。
これでは、「何の本じゃい?」ということになってしまいます。
これはもちろん極端な例ですが、カヴァー・デザインの現場では、
似たような事態が発生することもままあります。

・・・というわけで今回もふだんと同じく、
「一発でイメージが伝わるイメージとはこの場合、何ぞや?」
をまず考えなければならなかったわけですが、
幸運にも今回はこれが、すでにしょっぱなから決まっていたわけです。
(といっても、私ひとりの主観ですが・・・)
長々とすみません。続きは次回にもちこさせて下さい。

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